良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について
平成23年10月25日に警察庁から出された通達について、様々な報道がなされましたが、誤解に基づくものも多く、市民の皆さんから不安の声が聞かれます。ここは原文をしっかり読んで、そういった疑問、不安、不満について考えてみたいと思います。
良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について
まず第一に、1970年代の交通戦争以来、自転車を歩道へ上げるという政策が遂行されて来たため、「自転車は歩行者である」という一種の錯覚が、市民の中に浸透していることが挙げられます。
しかし、道路交通法にも書かれている通り、自転車はれっきとした「車両」であり、歩行者ではありません。
まずはこの誤解を解くために、通達では「自転車利用者のみならず、自動車等の運転者を始め交通社会を構成する全ての者に徹底させる」としています。
「自転車で車道を走るのは怖い」「自転車に車道を走られたら邪魔」という方にも、ここはまず、大前提として受け入れていただきたい。
その上で、人が安全に歩ける道とは、自転車が安全に走るには、クルマがスムーズに走るには、といったことを考えていかなければなりません。間違った前提は、決して望ましい結果を生みません。
第二に、歩道は歩行者の聖域であるということ。
歩道は、あらゆる交通弱者が通ります。高齢の方。目の見えない方。耳の聞こえない方。小さなお子さん。大きなお腹を抱えた妊婦さん。歩くこともおぼつかない方。
歩道はそれらの方々の安全を最優先に考えなければなりません。
私は小学生の自転車も車道を走るべきだと考えていますが、現行の道路交通法では、13歳未満のお子さんは歩道の通行が認められています。今回の通達でも、引き続き認める方向です。
ただし、その場合も「歩行者優先というルールの遵守を徹底させる」ということです。
新聞やテレビの報道では、「自転車事故の8割が対自動車」という数字が独り歩きし、さも自転車が車道を走ることが危険かのように思われているようですが、実際に事故が起きているのは交差点であり、歩道を走ってきた自転車が出会い頭にクルマとぶつかることが多いのです。
歩道を通行する自転車はクルマからあまり認識されません。それに対して車道を通行する自転車はクルマから常に見えているので、大きな事故につながりにくいのです。
歩道は安心だけど危険、車道は怖いけれども安全なのです。
そうは言っても幅寄せするクルマがいたり、路上駐車を避けるのが危険だったりという現状から、車道走行は無理と思われるかもしれません。
それに対する環境整備についても通達では触れています。
自転車専用通行帯(いわゆる自転車レーン)や、一方通行型の自転車道の整備を、クルマの車線を減らしてでも整備するところまで踏み込んでいます。
また、パーキングメーターの撤去や、駐車取り締まりの実施を実施するとのことです。
ルールを周知するだけでなく、実効性を高める努力は必要です。
車道を走行する自転車にとって、事故を誘発するもとであった、歩道を結ぶ自転車横断帯も撤去されるようです。
このように自転車が走りやすくなるような、道路環境の整備も通達には述べられています。
さらには環境整備を所管する国土交通省との協議も始まっています。
これは自転車に関する道路行政の一大転換点です。
クルマをスムーズに走らせることを主眼においたクルマ社会から、歩行者も、自転車も、安全に通行できる社会へと、大きく舵を切るのです。
これは行政だけでできることではありません。
クルマ社会にどっぷり使ったわれわれの、心構えから変えて行きましょう。
まずは交通ルールを学ぶこと。
今までテキトーに乗っていた自転車を、きちんとルールに則って乗るようにしましょう。
ただ、自転車の交通ルールはあまりにも複雑で、すべてを覚えるのは難しい。なので、最低限、『自転車安全利用五則』だけでも読んでみてください。
そして、自分の身は自分で守りましょう。
自転車の交通事故で、重大な障害を受けるのは頭です。大人の皆さんもヘルメットをかぶるようにしましょう。
13歳未満のお子さまには、ヘルメットをかぶらせる義務が保護者の皆さんにはあります。
行政まかせにするだけではなく、行政と市民が手を組んで、より安全な交通社会を作っていこうではありませんか。
(2011/11/17 投稿)